[回答]
ご相談の回収不能となった賃料に相当する金額については、昨年分の不動産所得の金額の計算上、なかったものとみなされることとなります。詳細は下記解説をご参照ください。
[解説]
1.建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定基準
所得税法上、マンションなどの建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうか(事業的規模であるかどうか)は、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるとされていますが、次に掲げる事実のいずれか1つに該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているもの(事業的規模である不動産所得)とするとされています(いわゆる5棟10室基準)。
2.事業的規模である不動産貸付けについて、賃料が回収不能となった場合の取扱い
所得税法上、納税者の営む不動産所得を生ずべき事業(事業的規模である不動産貸付け)について、その事業の遂行上生じた売掛金等の債権の貸倒れその他一定の事由により生じた損失の金額は、その人のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入すると定められています。
3.事業的規模でない不動産貸付けについて、賃料が回収不能となった場合の取扱い
所得税法上、その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除きます)の計算の基礎となる収入金額もしくは総収入金額(不動産所得を生ずべき事業から生じたものを除きます)の全部もしくは一部を回収することができないこととなった場合等の事由により、その収入金額もしくは総収入金額の全部もしくは一部を返還すべきこととなった場合には、政令で定めるところにより、その各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなった金額又は返還すべきこととなった金額に対応する部分の金額は、その各種所得の金額の計算上、なかったものとみなすと定められています。
したがって、今回のご相談の場合、事業的規模でない不動産貸付けの賃料が回収不能となったことから、その回収不能となった賃料に相当する金額は、昨年分の不動産所得の金額の計算上、なかったものとみなされることとなります。
この場合には、その貸倒れの事実が生じた日の翌日から2月以内に限り、その賃料を収入に計上した年分(昨年分)までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直す(更正の請求を行う)ことになります。
[参考]
所法51、64、152、所令141、180、所基通26-9など